データ復旧コラムvol.2

「中の人」がこっそり教えるデータ復旧業界の裏話コラム。

データ復旧するべきか、あきらめるべきか、決断する4つの要素とは?

データを復旧するべきか、あきらめるべきか、多くのお客様が悩まれる問題です。 費用の問題、時間の問題、理由は様々です。

「あのときバックアップを取っていたら」「もっと早く対処をしていれば」と「たられば」を悔やんでも仕方ありません。 厳然たる事実として、もはやデータは失われてしまったのです。

こうした思考は一旦棚上げして「今、何をするべきか」を冷静かつ速やかに考えなければなりません。

私は10年以上データ復旧の仕事に携わり、数千件を超えるデータ消失事案を見てきました。 その経験の中で、お客様がデータ復旧をするか、あきらめるか決断するときに、判断材料となっているのは大きく4つの要素があることに気づきました。そこで今回は、データ復旧を行うか決断するときに、考慮しておきたい要素をまとめてみました。

一つに「タイムリミット」、二つ目は「経済性」、三つ目は「唯一性」、最後は「信用」です。

データ復旧を行うか決断するときに、考慮しておきたい要素

1:タイムリミット

鮮魚や野菜など、生鮮食品は消費期限があり、一定の時間が過ぎると売り物にならなくなります。 データにも一定期間が過ぎると価値が損なわれる性質を持っているものがあります。

「明後日の新製品発表会に配布するカタログのデータ」「決算発表日間近の財務データ」「提出期限が迫った卒業論文」のように、使う期日が厳密に決まっているデータです。このような作り直すとタイムリミットに間に合わない類のデータなら、一刻も早くデータ復旧会社の扉をたたくべきです。

一方「昨年の発表会ので使ったカタログのデータ」や「去年の財務データ」、「学生の頃の卒業論文」のようなデータだとしたらどうでしょうか?何も急いで復旧する必要性がないデータです。 データが、いつまでに必要なのか「タイムリミット」を正確に把握しておく必要があります。

データ復旧会社に相談をする時には「とにかく早く」といった漠然とした期間ではなく、「○月○日の○時までに必要」という具体的なデットタイムを伝えてください。相談窓口で「その期間内にはまずできない」と見通しをきちんと伝えてくれる復旧会社は良心的です。正常なハードディスクであっても、データを取り出すには時間がかかります。3テラバイトのデータを1時間で復旧する、などハードディスクが持つデータ転送の理論値を明らかに超えるスピードでデータ復旧はできないからです。

また、特に理由はないけれど「なるべく早く」というのも考えものです。なぜならデータ復旧は急げば急ぐほど、交通機関と同様に値段が高くなりがちです。緊急扱いの依頼が発生すると、復旧会社は他の案件より優先して作業を行うため、新規の復旧案件をお断りしたり、復旧機材を押さえ、夜間や深夜もぶっ続けの24時間体制で復旧を行うシフトを組みます。このコストはもろに料金に跳ね返ります。

意外なことにデータ復旧に掛かる時間よりも、お客様の社内決済に時間が掛かってしまうことがよく見られます。 データ復旧は時間内に仕上げる見込みにもかかわらず、最終意志決定が遅れ、データの納品が大幅にずれ込むということが毎月必ず発生します。案外、官庁や大企業のほうが「非常事態発生」という認識を組織として早くから共有することができているため、素早く意思決定が行われますが、中規模の企業は事態の深刻さを組織として認識するのが遅く、通常のワークフローに乗せてしまうため「来月の取締役会の承認が必要」といった意思決定が遅れる傾向があります。

加えてハードディスク社外持ち出し禁止の情報管理規定があるにも関わらず、許可無く現場判断でハードディスクを持ち出し、いざ支払の段階になって持ち出しが発覚し、「情報漏洩(インシデント)が発生した」と大騒動になる事例も年に数回はあります。

最後にあまり考えたくないことですが、データ復旧をしても到底タイムリミットに間に合いそうにない、復旧が成功する見込みが無いことも想定し、スケジュールの見直しや利害関係者への謝罪、損害賠償等も考慮しておくべきです。

タイムリミットを過ぎると価値がなくなるデータも多い

タイムリミットを過ぎると価値がなくなるデータも多い

2:経済性

ビジネスで使うデータなら、データ復旧をすることによる「経済性」について十分検討する必要があります。 失ったデータがもし、作り直しが利くものならばデータ復旧の「料金」と、作り直したときの「人件費」で比較すると良いでしょう。

仮に、半期6ヶ月分の販売管理データが入ったハードディスクが壊れたとします。幸い、紙に出力した売上伝票などの証憑は残っており、二人で1日8時間、一ヶ月(20稼働日)データ入力を行えば復旧できると仮定します。

まず、「時間単価3,000円」(時給ではなく、払う料金です)の”単発”派遣スタッフに、データの入力を依頼します。1日8時間働いてもらい、1日の料金は2万4千円。2人で1日4万8千円。20日で96万円にのぼります。

もちろん派遣を頼むのは経費がかかるので自社の従業員にやってもらう方法もありますが、これも決してタダな訳ではありません。社内の事務職に頼むと仮定します。一般事務職の平均年収は332万円(出典:転職サービスのDUDA平均年収/生涯賃金データ2012 http://doda.jp/guide/heikin/)とありますので、この数値をモデルとして計算します(自社の給与に当てはめてください)。この年収額に経費として社会保険料や通勤交通費など20%程かかりますから、この一人の従業員の雇用にかかる経費は年間で398万円、約400万円ほどになります。

400万円の人件費を月換算します。1年12ヶ月+賞与2ヶ月の計14ヶ月分で割ると、1ヶ月の人件費は28万円(手取り額でないことに注意)。平均的な就業日数である20で割ると、1日の人件費は約1.4万円となります。二人なら2.8万円、二人で20日なら56万円という数字が出ます。

一見、派遣より安いようにみえますが、こんな尻拭き仕事を押しつければ本来業務が滞ります。残業をしなければならなくなると56万円では済まないのではないでしょうか。(このご時世ヒマを持て余している従業員もいないと思いますが・・・)

また事務職でなく、「営業職」をかり出した場合、費用と損失はもっと大きなものになります。 前出の「DUDA」の資料で、営業職の平均年収を調べると463万円。社会保険料等の経費20%を加算すると555万円となります。14ヶ月で割るとひと月39.6万円、約40万円の人件費となります。

営業職は一般的に給料の2~3倍売上を上げなければなりませんから、40万円の人件費をまかなうには、少なくとも80万円の利益を稼ぐ必要があります。仮にひと月営業に出られなければ人件費40万円だけでなく、80万円の利益損失が加わりますので、復旧活動に駆り出した場合、計算上一人120万円近い損失となります。

単体ハードディスクのデータ復旧は、当社の場合どんなに重たい症状であっても、どれだけ容量が大きくても上限で50万円です。データ復旧は一見すると割高に感じられることもありますが、作り直すよりもずっと安く済むことが多いのです。

データ復旧した方が安いか、作り直した方が安いか?

データ復旧した方が安いか、作り直した方が安いか?

3:唯一性

失われたデータが唯一無二のものかは重要な判断材料です。 現場写真やイベントの動画、測量データなどの作り直しが利かないものがこの類で、データ復旧が最後の手段となります。このようなデータは対価が発生しているものなら価値の評価はしやすく、1の経済性と併せて検討をします。

一方、唯一無二のデータでも、金銭的な価値に換算することができないデータもあります。 家族や旅行、記念日の写真、日記など「プライベートな記録」がこうしたデータの典型で、お客様は大変悩まれます。

このように本人以外には価値がないデータを、費用を払って復旧するか、しないかは持ち主の主観でしか判断ができません。あえて金銭的な価値に換算するならば、ハードディスクを第三者に壊されたとして「いくら弁償して欲しいか」を物差しとして考えてみるのも一つの方法です。

データ復旧の料金は「データを取り出す技術」に対する対価ですから、データの内容によって価格が変動することはありません(内容を盗み見て価格を決める業者もあるようですが・・)。

こうしたケースでは、当社では無理におすすめすることはいたしません。 逆にじっくりと情報収集をしてから決断をされるのが良いと思います。 このとき、安い業者を探し回り多数の業者で散々いじくり回されたあげく、二度と復旧できない状態になることも多いので注意が必要です。(まずは電話で相場観をつかむのが大切です)

金銭的な価値に換算することができないデータは思い入れでしか判断できない

金銭的な価値に換算することができないデータは思い入れでしか判断できない

4:信用

以前、大手インターネットホスティング会社で、顧客から預かっているサーバーデータがバックアップ操作のミスにより消失、ショッピングサイトや企業のWEBサイトが一瞬にして吹き飛びました。何億円もの損失が出たことは記憶に新しいことと思います。このホスティング会社はデータとともに信用も失い、顧客の流出が相次ぎました。 また、現場のエンジニアが客先のデータを消してしまったと、こちらも胸が締め付けられそうになる電話をいただくこともあります。

データが失われることによる最大の損失は「お金」ではありません。「信用が失われる」ことです。信用が失われれば事業を継続することが難しくなるからです。 納品直前にデータが消えて約束の期日に間に合わなくなる、預かっているお客様のデータを失った、帳簿が消えて期日に支払いができないといったことが起こります。 このような事態に陥ったとき、データ復旧を行うことにより、顧客の信用を維持することができるかが重要な要素となります。

信用はお金で買えない

信用はお金で買えない

つい先日も「数年前に見積をしてもらい、値段で諦めたけれど、どうしても諦めきれず、やっと費用ができたので復旧して下さい」というお客様がいらっしゃいました。
時間が迫っていないなら、急ぐ必要はありません。
あなたの大切なデータです。復旧するか、あきらめるか、じっくりと考えてみて下さい。

この項のまとめ
  1. いつまでに必要なのか?、間に合わないときはどうするのか?。緊急事態であることの認識の共有と社内調整をいち早く。
  2. 再作成費用>データ復旧費用 で考える!(作り直しが利くなら)
  3. 作り直しが利かないデータなら、データ復旧以外に選択はない。急がないデータはじっくり情報収集を。
  4. データ復旧により信用毀損が回避できるか?
このコラムは「データSOS」の運営元であるオーインクメディアサービス株式会社が著作権を保有しています。無断転載、翻案等はお断りいたします。なお、引用の際は一部、全部にかかわらず「データSOS」からの出典である旨と、当ページへのリンクを記載すれば、個別の許諾は不要です。ご不明な点は事前にお問い合わせください