ポータブルHDDをPCのUSBに接続すると「フォーマットしますか」と出て認識できなくなった、とご依頼いただきました。機種は東芝のCanvio、型番はDTB420、容量2TBのポータブルHDDです。
状況を確認します。PCのUSBに接続すると、青色のLEDがチカチカと点滅します。
しばらくすると「ドライブD:を使うにはフォーマットする必要があります。フォーマットしますか?」とメッセージが表示されます。

当然キャンセルを押しますが、次に「場所が利用できません D:\にアクセスできません。このボリュームは認識可能なファイルシステムではありません。必要なファイルシステムドライバーがすべて読み込まれているか、ボリュームが壊れていないか確認してください」のメッセージが出て、HDDにアクセスできない状態です。

続いてディスクの管理を開いてみます。
ディスク1が接続したCanvioです。
オンラインになっており、D:ドライブとして認識しているものの、ファイルシステムは認識しておらず「RAW」と表示されています。本来は「NTFS」なりが表示されるはずです。(フォーマットによっては「ExFAT」や「FAT32」など)

これは一見、論理障害に見えるのですが、実は不良セクタの問題、典型的な物理障害です。データ復旧ソフトで復旧させうようとすると悪化します。お見積りをご提出し、ご承諾を得られたので処置を行います。
分解してHDDを取り出します。

Canvioなので、USBコネクタ直付けタイプのMQ04UBD200です。

UBDの「U」はUSB直付けの意味です。

東芝ブランドのポータブルHDDにはSATAではなくこのUSB直付けタイプが採用されています。これではHDDに対し、詳細なコントロールができないので基板を処置します。

基板を処置して診断機につなぐと、HDDとしては正常に認識します。

一番重要なMFT(マスターファイルテーブル)が生きているか確認します。
MFTが収められているセクタに不良セクタが存在します。

処置を行い、セクタ単位でデータを回収し、MFTを解析。
NTFSが認識し、ファイルとフォルダが出現しました。
以前にCHKDSKが数回かかった痕跡がみられます。
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CHKDSKはWindowsに標準の修復プログラムですが、その挙動は不良を起こしているデータを「切り捨てる」という大変雑な処置をします。CHKDSKをお勧めしない理由がこれです。何の解決にもならないばかりか状態を悪化させるだけです。
「CHKDSKを行いますか?」と表示されたHDDは買い替えのサインです。もうそのHDDの信頼性はゼロとお考え下さい。
CHKDSKは行わないで、とにかく重要なデータを退避をさせてください。
症状が悪化すると今回のような状態に至ります。
幸いお持込いただいたのが初期症状であったため、データは1ファイルを除き復旧可能でした。
ご用命ありがとうございました。

